〜会社と家族を守るための「デジタル資産整理」〜
近年、「終活」という言葉は多くの人に浸透しています。
相続や遺言、身の回りの整理を行うことを指しますが、
デジタル化が進んだ現代では、もうひとつ重要なテーマが加わりました。
それが「デジタル終活」です。
特に経営者にとって、デジタル終活は単なる個人の整理ではありません。
会社の存続や社員の生活に直結する、経営リスク管理の一環と言えます。
■ 経営者が抱える「デジタル資産」とは
経営者の日常は、無数のデジタル情報に支えられています。
たとえば、
- 銀行や証券会社のオンライン口座
- クラウド会計ソフトや販売管理システム
- 社内の共有ドライブやGoogle Workspace、Dropbox
- SNSやホームページの管理アカウント
- ChatGPTなどのAIサービスや有料ツール
これらの「ID・パスワード」は、まさに企業活動の心臓部です。
もし経営者に急なトラブルが起きた場合、
誰もログインできないまま、資金移動も情報共有もできなくなる──
そんな“デジタル資産の孤立”が実際に多くの企業で発生しています。
■ 放置するとどうなる?デジタル遺産トラブルの実例
「社長のパソコンがロックされて開けない」
「取引先とのやり取りがメールでしか残っておらず、アクセスできない」
「Webサイトの契約者が社長名義で、更新も停止」
こうしたトラブルは、経営者が不在になった直後に起こりやすいものです。
特にクラウド化が進んだ今、**“紙では残っていない情報”**が多く、
アクセス権限の管理を怠ると、企業全体が機能不全に陥ります。
■ 今から始める「経営者のデジタル終活」
デジタル終活は、難しいものではありません。
ポイントは「見える化」と「引き継ぎ」です。
① 資産の棚卸し
まずは、業務に関わる全てのデジタル資産をリスト化します。
「何のサービスを、どのアカウントで、どこに支払いをしているか」を
Excelやノートにまとめておきましょう。
② アクセス権の整理
経理担当者、システム担当者、後継者などに
最低限のログイン権限を分散しておくことが重要です。
Googleアカウントやクラウドストレージでは「共有権限設定」で対応可能です。
③ パスワード管理ツールの活用
「1Password」や「Bitwarden」などのツールを使えば、
安全にID・パスワードを一元管理できます。
緊急時の“アクセス方法”を信頼できる人に伝えておくと安心です。
④ デジタル遺言書を作る
すべてを紙に残す必要はありません。
「この情報はどこにあり、誰に何を託すか」
を整理しておくだけでも、後継者への引き継ぎは格段にスムーズになります。
■ デジタル終活は“次世代経営”の第一歩
デジタル終活は「死後の準備」ではなく、
「今を守るための経営リスク対策」です。
経営者自身の安心だけでなく、
社員・取引先・家族に迷惑をかけないための「経営責任」でもあります。
特に中小企業では、社長個人が全デジタル情報を握っているケースがほとんど。
いざという時に「会社が止まらない仕組み」を整えることこそ、
本当の意味での事業継続(BCP)と言えるでしょう。
■ 最後に
デジタル終活を始めるタイミングは「思い立った今」です。
まずは小さな一歩として、
自分のスマホやPCの中を見直してみてください。
会社を守り、家族を安心させるための“デジタル整理”。
それが、これからの時代の経営者に求められる新しい「終活」です。






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