~経営者に求められるID・パスワード管理の重要性~
「終活」という言葉は、かつて相続や葬儀など人生の終わりに備えた整理を意味していました。しかしデジタル化が進んだ現在では、IDやパスワードを含む「デジタル資産」の整理、いわゆる「デジタル終活」が不可欠になっています。特に50代から60代の経営者にとっては、事業や資産の継続性に直結する重要課題です。
多くの経営者が直面するのは「アカウントの乱立」です。銀行や証券口座、クラウド会計ソフト、取引先とのファイル共有、SNSやメールなど、利用するサービスは年々増加しています。現役時は本人が把握していれば問題ありませんが、不慮の事態で経営者が不在となれば、誰もログインできず事業が滞るリスクがあります。例えば銀行口座の情報が分からなければ振込や給与が止まり、クラウド上の契約書にアクセスできなければ取引が中断し信用を失う恐れもあります。こうした見えない資産は、紙の書類や金庫以上に重要といえるでしょう。
対策としてまず必要なのは「体系的な整理」です。付箋や手帳、記憶に頼った管理は危険であり、パスワード管理ソフトや暗号化クラウドの活用が推奨されます。さらに、後継者や家族に最低限必要な情報を安全に引き継ぐ仕組みを準備することも経営者の責任です。
次に欠かせないのが「定期的な見直し」です。不要なアカウントを放置すれば不正アクセスの温床となり、逆に重要なアカウントは二段階認証で守る必要があります。何を守り、何を削除するかを仕分ける作業こそがデジタル終活の出発点です。
デジタル終活は単なる老後準備ではなく、事業継続のためのリスクマネジメントです。整理を怠らなければ、万一の際にも家族や社員は混乱せず、取引先との信頼も守られます。これは企業とその周囲の生活基盤を守る行為でもあります。
経営の経験を積んだ50代から60代の世代だからこそ、今のうちに取り組む価値があります。デジタル終活は「備え」であると同時に、築き上げた知識や人脈を次世代へ橋渡しする大切な取り組みなのです。
経営者がすぐに取り組むべき3ステップがこちらになります。
(1)アカウントの棚卸し
銀行、クラウド、メール、SNSなど、利用中のサービスを洗い出しリスト化。不要なものは解約・整理する。
(2)安全な管理体制の導入
パスワード管理ソフトや暗号化クラウドを活用し、「紙や記憶頼み」をやめる。重要なものは二段階認証で強化。
(3)引き継ぎの仕組み作り
後継者や家族に必要最小限の情報を安全に伝えるルールを整備。定期的に更新し、専門家や顧問とも連携する。
この3ステップを実行することで、デジタル終活は単なる準備ではなく「経営を守る実践的対策」となります。



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